【日独比較】髭について考えよう

ドイツに来て、髭が生えている人をよく見かけます。

もちろん髭がない男性もいますが、日本よりも髭率が高いです。

そもそも私が髭について気になったきっかけは、旦那さんの影響です。

日本にいる時、旦那さんの勤めていた会社の規定では髭は剃らなければいけませんでした。しかし、働いてから初めてドイツに帰省した後から髭を伸ばしたいと言うようになりました。

彼の友達は結構皆髭が生えていて、伸ばしたくなったのかもしれません。

その後、社長に規定を変えてもらうように直談判していました。結局、ガミガミ上司に言われない程度に髭を伸ばすようになりました。

日本では、旦那さんのように、職場のルールで髭を剃らなければならない所は多いかもしれません。

それは、日本では「髭は汚い」というイメージがあり、ビジネスの世界で清潔感を出すことを求められる際に髭は好ましくないと考えられているからではないでしょうか。

では、なぜ日本には「髭=汚い」といったイメージがあるのでしょうか?

The History of Beard in Japan

日本 髭の歴史

日本の髭の歴史を調べてみると、髭が男のたしなみとされていた時代と、髭が禁止される時代が交互に繰り返されてきたのが分かりました。

参考文献

貝印のホームページ

1. 戦国武将

武士が権力を握っていたころ、髭を伸ばすことで武威を誇示していました。


2. 江戸武士

江戸時代の初期以降、髭を剃る習慣が広がり、1670年には家綱が「大ひげ禁令」を発令しました。

それ以降江戸時代において、髭=野卑というイメージが広がりました。


3. 外国人到来

しかし、幕末の外国人来日を機に、髭=文明のイメージに転換していきます。


4. 文明開化

明治に入るころには、断髪する動きとともに、髭を蓄える習慣も復活しました。

明治天皇は、1873年に断髪をし、洋装に髭を蓄えた姿で外交儀礼しました。


5. アメリカでの安全カミソリ普及

1895年、アメリカでキング・キャンプ・ジレットが安全カミソリを発明します。その後、第一次大戦時には、ジレットは軍と契約したことで、戦争が終結したころには安全カミソリがアメリカ中の男性に使われるようになりました。それによって髭剃りが定着しました。

6. 昭和初期の日本

昭和初期の日本でも、アメリカ映画の影響などで、モダンガール訳して「モガ」と呼ばれる若い女性が髭を忌避し、「モボ」(モダンボーイ)と言われた日本人男性の髭なしが増えました。


7. 軍国主義と髭

その後、軍国主義が台頭すると、髭愛好家たちが運動を展開します。そして、新聞記事やラジオ番組では「髭の復権」といえる論調が広がりました。


8. 戦争と髭

髭について、軍隊で明確な規則を設けられたわけではありませんでした。

一般兵士は安全カミソリで髭を剃っていたそうですが、中には威厳を示すために髭を生やす将校もいました。


9. 高度経済成長

1953年の読売新聞には「朝のヒゲ剃りはエチケット」との記述があり、高度成長期には髭剃りがサラリーマンとしてのたしなみとして定着しました。

1973年に東京都が行った調査では、男性の「髭率」は5%にとどまりました。


10. 若者の髭

学生運動が盛り上がった60年代後半、サラリーマン社会に反発するかのように髭を生やす人々もいました。

当時の『週刊朝日」(69年1月24日号)では、「ヒゲ・ブームを支えているのは、権力とは無縁のヒッピー族やジャズバンド・マン、アングラ族」という記述があります。

また、反体制の若者を惹きつけたのは、キューバ革命でカストロを支えたカリスマ革命家のチェ・ゲハラの髭を蓄えた姿だったようです。


11. 「無精ヒゲ風」ブームの到来

1990年代に、「無精ヒゲ風」ブームが到来してから、2000年に入ると中田英寿やイチロー、ベッカムなど無精ヒゲを生やす男性が雑誌などで登場してから、現在まで流行が長期化しています。

個人的に、「無精ヒゲ」の「無精」は「面倒くさがり、怠けること」などの意味があり、この言葉自体にマイナスイメージがあるように感じます。


What is the role of beards?

髭の役割ってなんだろう?

そもそも髭は、生物学的に性別を見分けるための手段とも言えます。

そしてその髭は青年期から生え始めるものであり、言わば大人の男性である証です。

心理学的に、髭がある男性はそうでない男性に比べよりセクシーに見えるようです。その理由は、髭が多ければ多いほど、男性ホルモンの一種であるテストステロンが多いということになり、その人をより男らしくみせるからです。

ヨーロッパでは、一般的に髭は男らしさにつながると考えられているようです。

今回、ドイツの髭事情についていろいろ調べましたが、ヨーロッパの歴史しか出てきませんでした。

これまでドラマを見たり、実際に色々な国の人と出会った中で、ヨーロッパにおける髭に対する認識は同じだと感じたので、ヨーロッパにおける歴史について触れようと思います。

ヨーロッパでは、髭はいつの時代においても強さ、賢さ、勇敢さ、人間的な成熟を表すと考えられてきました。


The History of beard in Europe

ヨーロッパ 髭の歴史

1.古代ギリシャ

この時代の男性は、髭をとても長く生やしていましており、口の上の髭を剃っていました。とても長かったので、彼らの中には、髭をカールさせる人もいました。

そしてホメーロスの叙事詩には、髭は男らしさを表すもの、さらには神聖なものだと考えられていました。

当時は、髭がないと軽蔑されていたので、卑怯者は罰として公の場で髭を剃られていました。

髭は女性にはない男性特有のものであり、その髭を持たない男性は、「女性みたい」だと周囲に思われていたのです。


しかし、戦争時に長い髭は敵によくつかまれたということから、マケドニア大国のアレクサンドロス3世は兵士たちに髭を剃るように言ったそうです。


2. 古代ローマ

ローマ人はもともと髭を剃る習慣はありませんでした。

しかし、第二次ポエニ戦争でハンニバルを破ったことで知られるスキピオ・アフリカヌスが、5世紀後半にローマ人の中で初めてあごひげを剃っと言われています。
また、それは自分はギリシャ人ではなく、ローマ人であることということを示していました。

その後、髭が生え始めて、最初に剃ることが大切だと考えられるようになり、さらにはお祭りになりました。初めて髭を剃ることは、成人の始まりだと考えられていたのです。

若い男性はその祭りに参加するために、オリーブオイルを顔に塗り、濃い髭が生えてくるように願うようになりました。

3.ケルト人・ゲルマン人

ケルト人

ケルト人とは、ケルト語派の言語を話す人々を指します。

ケルト語派は、インド・ヨーロッパ語族の一派で、もともとヨーロッパに広く栄えていたケルト人によって話されていました。

ケルト人は、その後ローマ人やゲルマン人に追われ、現在はアイルランド、イギリス、フランスの一部地区にいると言われています。

ゲルマン人

ゲルマン人とは、インド・ヨーロッパ語族-ゲルマン語派に属する言語を母語とする民族です。

彼らは、現在のドイツ北部・デンマーク・スカンジナビア南部地帯に居住していました。

歴史上初めてゲルマン語を話す部族、部族連合を原資ゲルマン人、または古ゲルマン人と呼びます。

この原資ゲルマン人は、現在のデンマーク人、スウェーデン人、ノルウェー人、アイスランド人、アングロ・サクソン人、オランダ人、ドイツ人などの祖先となりました。


当時のケルト人の彫刻を見ると、長い髪と鼻の下の髭が彫られていますが、その他の髭はありません。

また、ローマ人のカエサルによると、イギリス人は鼻の下の髭を除いて髭がなかったと報告しています。

一方、ブリテン諸島に住み着いたアングロ・サクソン人には髭がありました。

アイルランドとスコットランドの男性は、髭を伸ばしていました。彼らゲール人の男性は、髭がないことは不名誉なことだと考えていました。

また、ゲルマン民族の一派であるLombards=ランゴバルド人(6世紀後半にイタリア半島にランゴバルド大国を築いたことで知られる)の、「ランゴバルド」の語源は「Lombards-Long Beards-長い髭」だという説もあります。

4.中世ヨーロッパ

中世ヨーロッパでは、髭は騎士の男らしさや名誉を表しました。

また、誰かの髭をつかむことはとてつもない攻撃であり闘争に発展することもありました。

高貴な騎士は髭を生やしていましたが、カトリック教の聖職者たちは一般的に髭を剃ることを求められました。この聖職者の行為は、禁欲の象徴として理解されていました。




5.近現代から現代ヨーロッパ

15世紀

ほとんどの西洋人は綺麗に髭を剃られていました。


16世紀

このころ、男性は髭を長く伸ばすようになりました。


17世紀

西洋では髭の量は劇的に減りました。そして徐々に綺麗に剃り、髭をなくすのが一般的になりました。

またロシアは、現代西ヨーロッパ社会に合わせるため、ピーター王は男性に髭を剃るように命じました。そしてさらには、1706年に髭に特別税を課しました。


19世紀

貴族や上級階級の人々の間で、多くの男性は綺麗に髭を剃っていました。しかしながら、1850年代に髭を生やすのが、再びブームになったのです。

その後、ドイツのフレデリック3世や、ロシアのアレクサンドル3世、フランスのナポレオン3世などの様々なリーダーが髭を生やすようになりました。

このトレンドは、アメリカのでも広まり、南北戦争時代の大統領たちに見られます。

リンカーンの前は、大統領が髭を持つことはありませんでした。リンカーンから、ウィルソンまで11名の大統領に髭がありました。その他アンドリュー・ジョンソンとマッキンリーは口ひげのみでした。

この時期、髭は男性の度胸や男らしい意志と繋げて考えられるようになりました。


20世紀

20世紀初頭のヴィクトリア朝時代には、髭ブームは徐々に衰退し始めました。

しかし、1920年代から1930年代にかけては、口ひげだけ生やす人や、あご髭だけ生やす人など、多くの人が髭を生やす場所を制限していました。有名な人物は、アインシュタインやレーニン、スターリン、ヒトラーなどです。

1950年代のビートニクや1960年代半ばのヒッピーなどによる反体制文化活動によって、髭は再び社会に紹介されるようになりました。

その後、ベトナム戦争が終わるころには髭が人々の間で定着しました。

1960年代後半から1970年代では、ビジネスマンやヒッピーの間で髭が定着しました。また、この時期ビートルズやビーチボーイズなど様々な音楽アーティストも髭を生やしていました。

1980年代半ばには、髭のブームは至る所でみられるようになりました。

その後、髭ブームは現在まで続いています。

2010年代には若者の間で、髭を生やすのがイケてると考えられるようになりました。


参考文献

Evolution Of BEARD And Relation To The Hipster Trend

Beard Wikipedia

WIKI-BEARD:COMPLETE BEARD'S HISTORY


50の髭スタイリングと髭の世界大会

髭について調べていると、50種類のスタイリングを紹介しているサイトを発見しました。

こちらです。

以下の写真は一部ですが、色々なスタイリングがあるのが分かります。


髭って奥が深くて面白いです。


また、髭を競い合う大会もあります。

その名も、The World Beard And Moustache Championships です。

この大会は口ひげ、部分的な髭、ふさふさした髭の3つの部門があり、その中で全17種類のカテゴリーに分けられ、それぞれ1位から3位まで選ばれます。


日本でも最近はオシャレ感覚でひげを生やす人が増えてきているようですが、社会的にはまだ清潔感が失われると思われている気がします。

しかし、歴史的に見ると髭を生やす時代もあったことには驚きました。

ヨーロッパの歴史でも、髭を禁止した時代もあると知りました。

本当に髭は奥が深いです。意外にも髭は歴史を読み解く一つの鍵になっていることが分かりました。

時には勇ましさや賢さを表し、時には髭が社会への反抗を表すシンボルになったり、時に髭がないことが美徳とされたりと、人々に与えてきた髭の影響力を学びました。

また、髭はその人の顔の印象をより強める役割をすると思います。ヒトラーと言えば、口ひげが印象的です。あの口ひげ=ヒトラーのイメージが付きすぎて、彼のような口ひげを生やしたいと思う人は誰もいないのではないでしょうか。

サンタさんに髭が生えていなかったら、誰もが偽物だと思うでしょう。サンタさん=赤い服と白い髭というイメージが定着しているからですね。

今回調べてわかったことは、現在の日本人の髭率が少ない理由は高度経済成長時に広まった「髭剃りがエチケット」という考えがいまだに残っているから、ということです。

現代になり日本で髭が流行らなかった理由でヨーロッパと異なる点は、有名人に髭をはやす人がいなかったことではないでしょうか。

ビートルズなど有名なアーティストが髭を生やしていた1960-1970年代、日本の有名なアーティストには皆髭がありません。ジャッキー吉川とブルーコメッツ、坂本九、ザ・スパイダーズ、など皆髭がありません。

私は髭を推進しているわけではありませんが、何となく日本の社会は髭を嫌いすぎなのではないかなと思います。

髭も髪型同様オシャレの一部としてもっと定着していくのも良いんじゃないかなと思います。その人の個性をより引き出してくれるかもしれません。